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らくご・きょうそれつでん

落語・教祖列伝

坂口 安吾

03 花天狗流開祖

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,667 字 · 30 页

青空文庫

アネサはすでにグッスリねついて、オカカのいかなる熱論もアネサの耳の孔までしみこむスベがないからである。

アネサの働く時間は短かかったが、通算して一人前はたしかに働いていたろう。重い物を運ぶ時などは、アネサが存分に怠けてやっても、そのノロノロとした一度だけで馬並みのことはあるからであった。アネサの食量がやや馬に近いだけ、オカカはタダの人間をヨメに選ぶべきであったのである。

だから、オカカが庄屋のオトトへ泣き言をならべにでかけても、庄屋のオトトは良いところへヒマツブシの慰み物がきてくれたと薄笑いをうかべて、

「ンナトコのアネサ、病気らか」

「バカこきなれや。オラトコのアネサにとりつくことができるような病気がいたら、呼んでもらいてもんだ」

「ンナトコのアネサが丈夫らば、困ることがあろうば。牛と馬が六匹うごいているようなもんだ」

「なに、こくね。あんたに呉れてやるすけ、オラトコのアネサ持ってッてくんなれや」

「オレは熊は使うてみていと思わねな」

「ザマ、みなされ」

オカカは腹を立ててもいるが、落ちついてもいる。今日、庄屋のオトトのところへ来たのはタダの話ではない。庄屋のオトトも肝をつぶすに相違ない話なのである。