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ヒューネラル・マーチ

葬送行進曲

野村 胡堂

「文芸倶楽部」1931(昭和6)年4月増刊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,494 字 · 25 页

青空文庫

「すると誰だ、誰が隆を殺したと言うのだ」

「酒巻さんは、心臓麻痺と言う診断書を書いただけの事なのです」

「誰だ、誰だ」

讃之助が物凄まじい亢奮に囚えられると、勢子は反対に益々冷静になって行きます。

「お目にかけましょう、その犯人を」

「サア見せてくれ」

「その前に」

「その前に何んだ、何が入用だ」

「私の手柄に酬いて下さるでしょうね」

「それは酬いる、何が望みだ」

「愛情、昔のような」

「馬鹿なッ」

払い退けようとする讃之助の首に、サッと飛付いた勢子は、双腕を巻いて――。

「エッ、何をする」

と言ったが及びません。

妖艶な年増の魅力は、この一瞬間に蘇返って、造り変えた人造人間のような不気味な顔にも、火のような情熱と、不思議な美しさが咲き乱れます。

「エッ離せッ」

「もう沢山、これ以上、どうもしようとは申しません。サア、入らっしゃい、隆の敵、――恐ろしい殺人鬼の姿を見せて上げましょう」

讃之助は不思議な興奮の中にも、恐ろしい期待に顫えて勢子に従いました。

一度廊下へ出て、真っ直ぐに三つ目、左の扉を開けると讃之助の書斎です。

「――――」

勢子は黙って入って、向うを指して居ります。