轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

たでくうむし

蓼喰う虫

谷崎 潤一郎

「大阪毎日新聞 夕刊」1928(昭和3)年12月3日~1929(昭和4)6月17日<br>「東京日日新聞 夕刊」1928(昭和3)年12月3日~1929(昭和4)6月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 110,066 字 · 216 页

青空文庫

それをそうでなく取ったのは彼の邪推であったかも知れない。彼女はうそをつくことは嫌いであるし、又うそをつく必要はないにきまっているのだから。が、夫に取って決して愉快でない筈のことをそうハッキリと云うまでもないから、「神戸へ買い物に行く」という言葉の裏に「阿曽に会いに行く」と云う意味が含まれていたものと解釈したのは、彼の立ち場からは自然であって、悪く感ぐった訳ではなかった。妻の方でも要が邪推や意地悪をしたのでないことは分っているに違いなかった。或は彼女は、ゆうべも会うことは会っているのだが、今日も会いたいのであるかも知れない。最初は十日置き、一週間置きぐらいだったのが、近頃は大分頻繁になって、二日も三日もつづけて会うことが珍しくないのであるから。

「あなたはどうなの、御覧になりたいの?」

要は妻が這入ったあとの風呂へ漬かって、湯上りの肌へバスローブを引っかけながら十分ばかりで戻って来たが、美佐子はその時もぼんやり空を見張ったまま機械的に爪をこすっていた。彼女は縁側に立ちながら手鏡で髪をさばいている夫の方へは眼をやらずに、三角に切られた左の拇指の爪の、ぴかぴか光る尖瑞を間近く鼻先へ寄せながら云った。