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ふきもんどう

蕗問答

山本 周五郎

「冨士」大日本雄辯會講談社、1940(昭和15)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,898 字 · 14 页

青空文庫

新九郎は正に閉口した。

こうしたいくたてを当の浪江が知らぬ筈はない、だからそっちのことについては少しも心配していなかったのであるが、秋田の家へ帰ると同時にそれも怪しいことになった。

浪江は新九郎の気持などは少しも考える様子がなく、本当に寒森家の主婦になったつもりでもあるかのように、てきぱきと家政の切盛を始めたのである。……醜女ではあるが彼女は健康な体と怜悧な頭を持っていた。なにしろ当時の制度として百石につき三人の家来を養わなければならぬから、掟通りではないにしても寒森では二十人に近い家士を抱えている、しかも藩政逼迫で食禄も八百石きちんと払われることはなく、献納金、あるいは借上げなどの名目でほとんど半分くらいは手に入らない、だから家政はひどく苦しいのが当然であった。

浪江はまずこの窮乏している家政の打開を始めた。

その第一は寒森家に属する荒地二十町歩の開墾である。むろん他人の手は借りない、二十人の家士を督励し、自分も鍬を執って真先に仕事に掛った。

新九郎はまるでそんなことは知らなかった。するとある日のこと、三名の家士がやってきて、

「我々一同にお暇を頂きたい」