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とうそんのこせい
藤村の個性
和辻 哲郎
「新潮」1951(昭和26)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,764 字 · 14 页
これはもと幕府の奢侈禁止令に対して起こったことであるかもしれぬが、やがてそれが一つの好みになってくると、奢侈をなし得る能力のあるものでも、それを遠慮した形で、他人に見せびらかさない形でやることが、奥ゆかしいように感ぜられて来た。これは欧米人が、その奢侈をありのままに露呈してはばからないのに比べると、非常に異なった好みである。世間をはばかり、控え目にするという態度そのものが、その好みの核心になっているのである。こういう好みは日本でももう古風であるかもしれないが、藤村にはそれが強く働いていたと思う。金持ちの息子が立派な住居に住んでいるのを批評して、あれでよく恥ずかしくないものだと言った藤村の気持ちには、それがあったであろう。彼はそういう住居を建てる資力を持っているかもしれない、しかしそれは彼自身が自分の仕事から得た資力ではないであろう、それならば彼は世間の手前そういう家に住むのを恥ずべきである。そう藤村は考えたのであろう。美しい住居そのものが無意義なのではない。彼自身も、「あのウイリアム・モリスのように、自分の心の世界と言ってもいいような家を作って、そして、そういうところに住んでみることは、決してぜいたくとは思いません。