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とうそんのぶんがくにうつるしぜん

藤村の文学にうつる自然

宮本 百合子

不詳

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,118 字 · 12 页

青空文庫

がとらえていないということを、きびしく云うには当らない。それらが、美化された労働・労働を眺めるもののロマンティシズムにたって謳われていることだけを云々するのは妥当を欠くであろう。藤村の歴史性、個人の境遇的な特質が、こういう風に積極的に人間と自然との結びつきを謳ってもなお歴然たるところに、未来の詩人たちへのかくされた可能なこの示唆があると思う。

小諸で暮すようになったその年、若い詩人で塾の教師である藤村は、冬子夫人と結婚した。「小諸へ行ってから更に大いに心を安んずることが出来た。」と書いている。落梅集に「枝うちかはす梅と梅」「めぐり逢ふ君やいくたび」「あゝさなり君の如くに」「思ひより思ひをたどり」その他少くない愛の詩が収録されていることも、当時のそのような事情とあわせ考えるとき、おのずから微笑ましく肯けるのである。

『落梅集』が詩人藤村にとって、少くとも今日までのところは最後の詩集となっている。小諸生活、良人となり父となって境遇の一層社会性の豊富になった日常は、藤村に「詩から小説の形式を択ぶように成」らしめた。

詩から小説へと移ったこの重大な転換の動機は、これまで藤村自身によって、その文筆的労作の中にこまかく分析されてはいないようである。