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あしかり

蘆刈

谷崎 潤一郎

「改造」改造社、1932(昭和7)年11月号、12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,413 字 · 78 页

青空文庫

すえに誰にもきずがつかぬようにえんまんに離籍の件がまとまったのでござりました。そういうわけでお遊さんは実家へもどってまいりましたが小曾部のいえは当時兄さんがそうぞくいたしておりましたのであれほど親たちが可愛がっていた人のことでござりますし粥川家の仕打ちがあんまりだからというつらあての気味もござりましてそりゃくにはあつかいませなんだけれどもそこは親たちがおりましたときのようにはまいりませぬから何かにつけてえんりょがあったことでござりましょう。それに、小曾部のいえがきゅうくつでしたらわたしのうちへきていらっしゃいとお静がすすめましたけれどもそういうことをいいふらすものがあるあいだは慎しんだ方がよいからとそれは兄がとめました。おしずの説では兄は事によるとほんとうのことを知っていたのではないかと申すのでござりましてあるいはそうらしくもおもわれますのはそれから一年ほどたちまして再縁をすすめたのでござりました。相手は宮津という伏見の造り酒屋の主人でだいぶんとしうえでござりましたが粥川の家に出入りをいたしておりましたのでお遊さんという人の派手なきだてをむかしから知っておりまして、こんどつれあいに死なれましたについてぜひにというのでござりました。