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そせい

蘇生

豊島 与志雄

「新小説」1918(大正7)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,974 字 · 31 页

青空文庫

その空しい両腕で彼は枕にしがみついた。そして泣き出した。嗚咽が後から後からと胸の底からこみ上げて来た。熱い涙が頬に伝わって流れた。

中西は廊下に落ちていた懐剣を拾い上げた。そしてそれを手にしたまま、其処につっ立って、何か云った。然しその声は、敬助の耳には聞えなかった。

夜が明けるまで、中西と看護婦と婆さんとは、敬助の側に起きていた。

絶望と荒廃と寂寥とのどん底につき当ると、敬助の心は其処で止った。後は両手に頭を抱え込んで、つっ伏したまま動かなかった。思い出したように時々、彼は慶子の名を胸の奥でくり返した。そして次第にその間の時間が長くなっていった。夜が明ける頃には、彼の凡ての意識は大きい渦巻きの中に巻き込まれて、ただ惘然としてしまった。

朝日の光りが障子にさした時、彼はじっと壊れた硝子のあたりを見やった。そして誰にともなく云った。

「済みません。」

硝子の代りに、婆さんは白紙を糊ではりつけた。敬助はその手元を眺めた。それから寒い爽かな朝の空が彼の眼にはいった。

「障子を開けてくれないか。」と彼は云った。

「寒くはないか。」と中西が云った。

「大丈夫だ。」