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そせい

蘇生

豊島 与志雄

「新小説」1918(大正7)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,974 字 · 31 页

青空文庫

そして皆で彼を元のように寝かしてくれた。その時彼は初めて、自分が蒲団の中に寝ていること、全身の関節に力が無くて骨がばらばらになってること、中西と婆さんと看護婦とが枕頭についていること、それだけのことを感じた。

何故だか分らなかった。然しそれが至極当然なことのような気がした。

「気がついてくれてよかった。どんなに心配したか分らなかったよ。」と中西がいった。

看護婦が手を上げた。猫が顔を撫でる時にするような恰好だった。

「静にしてい給えよ。」と中西はいった。そして彼は乗り出していた上半身を急に引込めた。

あたりがしいんとなった。何処かでひたひたと水の垂れるようなかすかな音がしたが、それはすぐに止んだ。「夜だな」と彼は思った。然し時間というものに対して妙な気が起った。時の歩みが全く止ったのか、または同じ瞬間が永続しているのか、どちらか分らなかった。二つは同じようなものであり乍ら、非常に異ったもののように思われた。そしてその二つの間の去就に迷っていると、「夜だな」という感じが遠慮なく侵入して来た。「夜!……夜!」そう頭の中で不思議そうにくり返していると、夢を見ているような心地になった。