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きょこうのはる
虚構の春
「文学界」1936(昭和11)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 54,586 字 · 108 页
〆切は二十五、六日頃までは待てるのです。小生ただいま居所不定、(近くアパアトを捜す予定)だから御通信はすべて社宛に下さる様。住所がきまったなら、お報せする。要用のみで失敬。武蔵野新聞社学芸部、長沢伝六。」
月日。
「太宰さん。とうとう正義温情の徒にみごと一ぱい食わせられましたね。はじめから御注意申しあげて置いたら、こんなことにはならなかったのでございますが、雑誌は、どこでもそうらしいですが、ひとりの作家を特に引きたててやることは、固く禁じられて居りますし、そのうえ、この社には、重役附きのスパイが多く、これからもあることゆえ、ものやわらかの人物には気をつけて下さいまし。軽々しく、ふるまってはいけません。春田は、どんな言葉でおわびをしたのか、わかりませぬけれど、貴方に書き直しさせたと言って、この二、三日大自慢で、それだけ、私は、小さくなっていなければならず、まことに味気ないことになりました。太宰さん、あなたもよくない。春田が、どのような巧言を並べたてたかは、存じませぬけれど、何も、あんなにセンチメンタルな手紙を春田へ与える必要ございません。醜態です。猛省ねがいます。