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きょこうのはる

虚構の春

太宰 治

「文学界」1936(昭和11)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 54,586 字 · 108 页

青空文庫

田所美徳。太宰治様。」

「拝啓。歴史文学所載の貴文愉快に拝読いたしました。上田など小生一高時代からの友人ですが、人間的に実にイヤな奴です。而るに吉田潔なるものが何か十一月号で上田などの肩を持ってぶすぶすいってるようですが、若し宜しいようでしたら、匿名でも結構ですから、何かアレについて一言御書き下さる訳には参りませんかしら。十二月号を今編輯していますので、一両日中に頂けますと何よりです。どうか御聞きとどけ下さいますよう御願い申します。十一月二十九日。栗飯原梧郎。太宰治様。ヒミツ絶対に厳守いたします。本名で御書き下さらば尚うれしく存じます。」

「拝復。めくら草子の校正たしかにいただきました。御配慮恐入ります。只今校了をひかえ、何かといそがしくしております。いずれ。匆々。相馬閏二。」

月日。

「近頃、君は、妙に威張るようになったな。恥かしいと思えよ。(一行あき。)いまさら他の連中なんかと比較しなさんな。お池の岩の上の亀の首みたいなところがあるぞ。(一行あき。)稿料はいったら知らせてくれ。どうやら、君より、俺の方が楽しみにしているようだ。(一行あき。)たかだか短篇二つや三つの註文で、もう、天下の太宰治じゃあちょいと心細いね。