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きょこうのはる

虚構の春

太宰 治

「文学界」1936(昭和11)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 54,586 字 · 108 页

青空文庫

メリメのマスクが一番好いでしょう。ボクはもう他人に向って好き、嫌いを云々しますまい。好きだから好きと、云ったのに、嫌いになったら、嫌いになったと云えない。ぼくはある娘に、そんな責任が出来て、嫌いになったのに、別れようと云えず、困っています。嫌いでも好きになりたいと努力するのは不可能です。ぼくは嫌いなまま愛さなければ不可ないのでしょうか。なんにも云いたくない。ぼくは余り多くの人々を憎んでいます。あ、ああ君も、お前も、キサマも、俺がこんなに苦しんでいるのにシャアシャアとして生きていやがる。」

「近頃の君の葉書に一つとして見るべきものがない。非常に惰弱になって巧言令色である。少からず遺憾に思っている。吉田生。」

月日。

「一言。(一行あき。)僕は、僕もバイロンに化け損ねた一匹の泥狐であることを、教えられ、化けていることに嫌気が出て、恋の相手に絶交状を書いた。自分の生活は、すべて嘘であり、偽であり、もう、何ごとも信ぜず、絶望の(銀行も、よす。)穴に落ち入る。きょうより以後、あなたの文学をみとめない。さようなら。御写真ください。道化の華は人殺し文学であるか。(銀行はよさない。