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きょこうのはる

虚構の春

太宰 治

「文学界」1936(昭和11)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 54,586 字 · 108 页

青空文庫

もっと送ってあげたく思いましたが、僕もいっぱいの生活でどうにもできません。麹町区内幸町武蔵野新聞社文芸部、長沢伝六。太宰治様、令閨様。」

月日。

「師走厳冬の夜半、はね起きて、しるせる。一、私は、下劣でない。二、私は、けれども、独りで創った。三、誰か見ている。四、『あたしも、すっかり貧乏してしまって、ね。』五、こんな筈ではなかった。六、蛇身清姫。七、『おまえをちらと見たのが不幸のはじめ。』八、いまごろ太宰、寝てか起きてか。九、『あたら、才能を!』十、筋骨質。十一、かんなん汝を玉にせむ。(ぞろぞろぞろぞろ、思念の行列、千紫万紅百面億態)一箇条つかんでノオトしている間に三十倍四十倍、百千ほども言葉を逃がす。S。」

月日。

「前略。その後いよいよ御静養のことと思い安心しておりましたところ、風のたよりにきけば貴兄このごろ薬品注射によって束の間の安穏を願っていらるる由。甚だもっていかがわしきことと思います。薬品注射の末おそろしさに関しては、貴兄すでに御存じ寄りのことと思いますので、今はくり返し申しません。しかしそれは恋人を思いあきらめるがごとき大発心にて、どうか思いあきらめて下さるよう切望いたします。