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むしのいのち
虫の生命
海若 藍平
「九州日報」1923(大正12)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,854 字 · 6 页
その男は神様の勘太郎の姿を見てこう云いました。
「ああ、蝶が沢山飛んで来たな。今年の正月、あの夢を本当にしてあの樫の木の虫を助けておりゃあ、今頃はあんな蝶になって飛びまわっているかも知れない。その代りおれの方は日干しになって死んでいるだろう。馬鹿馬鹿しい事だ。こっちの生命と虫の生命と換えられるもんか。どれ一つ炭を焼き初めようか。今度のは特別に虫の穴が多かったようだぞ」
と云いながら炭焼竈に火を入れましたので、やがて煙が濛々と大空に向って湧き出しました。
神様の勘太郎はまだ夢を見ているのか、それとも本当の事なのかさっぱり訳がわからなくなりました。