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くも
蜘蛛
甲賀 三郎
「文学時代」1930(昭和5)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,314 字 · 22 页
をさそうように冷たくよこたわっている。
私はいくどか眼をこすって見直した。しかし、錯覚でもなんでもなかった。私は室内を見まわした。しかし、むろん、ここ以外にドアがあろうはずがない。私はドアをバタリと閉めて、よろめきながら室内にはいって、ひとつひとつ窓をのぞきまわった。すると、どうだ。踊り場とそれへかけられた階段は三つ目の窓の下にくっついていた。
私は茫然とした。窓から踊り場に飛びおりれば、私は階下へおりることはできる。だからこの奇妙な塔上に閉じこめられることはまぬがれることができるのだが、しかし、きんきん一時間ぐらいの間に鉄筋コンクリートの階段が移動したとはなんと不思議千万ではないか。
しばらく茫然と突ったっているうちに、私はふとあることに思いついた。私は窓から差込んでいる日足をじっと観察した。それから窓外にそびえている大木をじっと観察した。
私は発見した! この円形の研究室はそれをささえている支柱を軸にして静かに廻転しているのだ! 私は突如思いあたった。私はこの部屋にはいるとまもなく机の裏側に妙なスイッチがあるのを見つけて、パチパチとひねってみて、結局元どおりにしたつもりだったが、あのために電路が閉じて、この直径二間半の鉄筋コンクリートの丸い塔が廻転をはじめたのにちがいないのだ。