轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
みつのあわれ
蜜のあわれ・われはうたえどもやぶれかぶれ
室生 犀星
室生犀星『蜜のあわれ・われはうたえどもやぶれかぶれ』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蜜のあわれ、陶古の女人。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,662 字 · 174 页
という化け物はしらべ上げられない場合が、たまにあった。併し陶器の素性がしらべ上げられないことは、絶無であった。そのきびしさは小説も及ばない、一個の壺がかりに五六百年経っているとしたら、恐らく何千人という人間の眼がそこでしらべ上げるために、そそがれていたことが判るのだ、人間の生きた眼のむらがりの中で名品とか逸品とかが、存在しつづけていたのである。恐ろしいことである。彼が陶器の判る人が怖いということにも、文学が彼よりもっと判る人が怖いとおなじことなのだ、ちんぴら作家がとても適わないようなものを書いたとすれば、よくやったという嬉しい溜息をつくまでに彼は成長しているのだが、それだから文学の世界が広くて怖くも思えるのである。
この信州の町にも美術商と称する店があって、彼は散歩の折に店の中を覗いて歩いたが、よしなき壺に眼をとめながら何という意地の汚なさであろうと自分でそう思った。見るべくもない陶画をよく見ようとする、何処までも定見のない自分に惘れていた、彼はこれらのありふれた壺に、ちょっとでも心が惹かれることは、行きずりの女の人に眼を惹かれる美しさによく似ている故をもって、郷愁という名称をつけていた。