轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
とんぼがえり
蜻蛉返り
佐藤 垢石
「釣趣戯書」三省堂、1942(昭和17)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,408 字 · 7 页
だが、鰡の方が一足先に山の上にいる番人の姿を発見すると、彼らは一目散に逃げ出してしまうのだ。湾口の網を締めるいとまのないほど、早い速力で姿を晦ましてしまう。
なぜそんな素晴らしい速力を持っているかというと、鰡は他の魚に殆ど類を見ないというトンボ返りの術を知っているのだ。どんな魚類でも方向転換するとき、いかに急いだからといったとて、一度前方へ半円を描かないと、後方へ頚を向ける動作はやれないのである。
ところが、この鰡君はそんな手数をかけない。物に驚いて、逸走の動作に移るとき、からだをそのまま、トンボ返りというのか、角兵衛の翻筋斗というのか、情勢に支配されないでうしろへくるりとまわり、勢い込めて逃げるからだ。
この魚と同じに、トンボ返りのやれる奴は、九州有明湾に棲んでいるムツゴロウという沙魚の一種だけであると、私の友達が話したが、果たしてどんなものだろう。
湾内へ泳ぎ込んだ鰡群を首尾よく漁ると、漁師はそのうちから、腹に卵を抱えているものだけを選びだして、沼津へ送るのである。沼津には、技術秀逸なからすみ製造工場がある。そこで、卵を立派なからすみに仕上げて、これを長崎へ移出するのだそうだ。