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かにこうせん
蟹工船
小林 多喜二
「戦旗」1929(昭和4)年5月、6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 61,890 字 · 125 页
同じ日のうちに、今までより五、六割も殖えていた。然し五日、六日になると、両方とも気抜けしたように、仕事の高がズシ、ズシ減って行った。仕事をしながら、時々ガクリと頭を前に落した。監督はものも云わないで、なぐりつけた。不意を喰らって、彼等は自分でも思いがけない悲鳴を「キャッ!」とあげた。――皆は敵同志か、言葉を忘れてしまった人のように、お互にだまりこくって働いた。ものを云うだけのぜいたくな「余分」さえ残っていなかった。
監督は然し、今度は、勝った組に「賞品」を出すことを始めた。燻りかえっていた木が、又燃え出した。
「他愛のないものさ」監督は、船長室で、船長を相手にビールを飲んでいた。
船長は肥えた女のように、手の甲にえくぼが出ていた。器用に金口をトントンとテーブルにたたいて、分らない笑顔で答えた。――船長は、監督が何時でも自分の眼の前で、マヤマヤ邪魔をしているようで、たまらなく不快だった。漁夫達がワッと事を起して、此奴をカムサツカの海へたたき落すようなことでもないかな、そんな事を考えていた。
監督は「賞品」の外に、逆に、一番働きの少いものに「焼き」を入れることを貼紙した。