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かにこうせん

蟹工船

小林 多喜二

「戦旗」1929(昭和4)年5月、6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 61,890 字 · 125 页

青空文庫

いた。手紙には無線を頼む金もなかったので、と書かれていた。漁夫が※(感嘆符疑問符、1-8-78) と思われる程、その男は何時までもムッつりしていた。

然し、それと丁度反対のがあった。ふやけた蛸の子のような赤子の写真が入っていたりした。

「これがか※(疑問符感嘆符、1-8-77)」と、頓狂な声で笑い出してしまう。

それから「どうだ、これが産れたんだとよ」と云ってワザワザ一人々々に、ニコニコしながら見せて歩いた。

荷物の中には何んでもないことで、然し妻でなかったら、やはり気付かないような細かい心配りの分るものが入っていた。そんな時は、急に誰でも、バタバタと心が「あやしく」騒ぎ立った。――そして、ただ、無性に帰りたかった。

中積船には、会社で派遣した活動写真隊が乗り込んできていた。出来上っただけの罐詰を中積船に移してしまった晩、船で活動写真を映すことになった。

平べったい鳥打ちを少し横めにかぶり、蝶ネクタイをして、太いズボンをはいた、若い同じような恰好の男が二、三人トランクを重そうに持って、船へやってきた。

「臭い、臭い!」

そう云いながら、上着を脱いで、口笛を吹きながら、幕をはったり、距離をはかって台を据えたりし始めた。