轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

はえ

蠅

宮本 百合子

「若草」1926(大正15)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,279 字 · 7 页

青空文庫

けれども、どんな大さで対象を視覚にとり入れるかは聞いたことがない。蠅は蠅なりの寸法に、宇宙の原寸をちぢめて感覚しているのだろうか。

彼は、好奇心を起した。人のよい薄笑いを浮べながら、彼は七八寸の距離で新聞紙の上にあった顔を、注意深くずーッと下げ、同時に両肱で体を少しずらせた。顎を新聞紙にのせちょうど顔の正面が、翅を擦ったり、鼻毛のような吸角を動かしたりしている蠅の頭と向い合わせになる位置にした。源一は、そして暫く様子をうかがった。彼は自分の大きい、薄髭の生えた青年の面が、小さい蠅にどんな感動を与えるか観察しにかかったのであった。彼は、昔は豚に騎(の)って上野の山を這って来た生徒さえある美術学校の学生であったから、自分のじじむさく髭をのばした黒い面が、蠅に与えるショックを研究することに、独特な感興を覚えたのであった。

源一は、それだけは疑なく美しい二つの眼に強い期待を表して顔をつき合わせた蠅を見守った。蠅は一向感情を動かさないらしかった。全然自分の目前に、源一の髭面が突出ているのさえ認めないらしい。源一は、劬(いたわ)りつつ口を尖(とがら)して蠅を吹いて見た。