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はえ

蠅

海野 十三

「ぷろふいる」1934(昭和9)年2月号~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,774 字 · 40 页

青空文庫

ロボット蠅は、それから後も、続々と偉功を樹てた。

第六話 雨の日の蠅

(妻が失踪してから、もう七日になる)

彼は相変らず無気力な瞳を壁の方に向けて、待つべからざるものを待っていた。腹は減ったというよりも、もう減りすぎてしまった感じである。胃袋は梅干大に縮小していることであろう。

妻を探しにゆくなんて、彼には、やりとげられることではなかった。外はどこまでも続いた密林、また密林である。人間といえば彼と妻ときりしか住んでいない。食いつめて、虐げられて、ねじけきって辿りついたこの密林の中の荒れ果てた一軒家だった。主人のない家とみて今日まで寝泊りしているのだった。

失踪した妻を探しにゆく気力もなかった。それほど大事な妻でもなかった。結局一人になった方が倖かもしれない。しかし、倖なんておよそおかしなものである。腹の減ったときに蜃気楼を見るようなもので、なんの足しになるものかと思った。

陽がうっすらとさしていたのが、いつの間にやら、だんだんと吸いとられるように消えていった。そしてポツポツ雨が降ってきた。密林の雨は騒々しい。木の葉がパリパリと鳴った。

丸太ン棒を輪切りにして、その上に板をうちつけた腰掛の下から、一陣の風がサッと吹きだした。