轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
こわく
蠱惑
豊島 与志雄
「新思潮」1914(大正3)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,765 字 · 28 页
私はラクダの毛織の長いマントを着、大きい鳥打帽を眼深にかぶって、それから頸巻で顔の下半分を包んだ。その頬の感覚が、特殊な私の世界に肉感の温味を与えた。
帰りに私はよく一つのカフェーに立ち寄った。それは広い通りから私の家の在る狭い横町へ入ろうとする所に在った。
私はその前で一寸立ち止まる。そして軽く頭を左に傾げてみる。その時心にさす影が不安な感触を与えない時、私はそのまま扉を押して中に入るのである。
すぐ前に大きい長方形の卓子があり、左手の奥に円いのと四角いのと二つの小さい卓子が並んでいる。蘇鉄と寒梅と松との鉢植がそれらの上に置かれている。右手が勘定台で、その上の格子から女中の髪に※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)した白い花の簪が見える。客が非常に少かった。私は室の奥に据えられた煖炉に火が焚かれたのを見たことがない。何時も女中が小さい瀬戸の火鉢を持って来てくれた。
其処に入ると直ちにそれらのものが私の世界に飛び込んで来て甦える。私の心の広さと室の広さとがぴったりと合うのだ。其処には何にも私の心の領域を越えた処から来る眼付がないのだった。