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ちぬられたかいとう

血ぬられた懐刀

国枝 史郎

「講談倶楽部」1928(昭和3)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,586 字 · 71 页

青空文庫

しかし、お紅にも秋安にも、そういう形勢は解っていた。

「もしものことがあろうものなら、潔よく自害をいたします」

九燿の星の紋所の付いた、懐刀をお紅は秋安に示して、そういうことを云ったりした。

が、ともかくも五日十日と、その後無事に日が流れて、二人の恋は愈々益々、その密さを加えて行った。

不破小四郎の邸

「浮田鴨丸めが不足している。ちょっと寂しい気持がする」

「まさかにあの晩に鴨丸めが、切り付けようとは思わなかった」

「性来鴨丸めは周章者なのだ」

「それに北畠秋元めが、切り返そうとは思わなかった」

「それに第一秋元めは、どうして俺達の忍び込んだことを、感付いたものか合点がいかない」

「随分上手に忍び込んだのだが」

「のっそりと秋元が現われた時には、さすがに俺もギョッとしたよ」

「秋元め随分冴えた腕だの」

「一刀に鴨丸を斃したのだからな」

「仰天して俺達は逃げ出したが、いつまでもマゴマゴしていようものなら、やっぱり秋元に切られたかも知れない」

「切られないまでも捕らえられでもしたら、それこそ本当に目もあてられない」

「何と云ったところで若い娘を、引っ攫おうとしたのだからな」

「いぜん娘は北畠の邸に、身をかくしているということだ」