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ちぬられたかいとう

血ぬられた懐刀

国枝 史郎

「講談倶楽部」1928(昭和3)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,586 字 · 71 页

青空文庫

承知かない場合には攫って来る」

間違いはないよと云うように、小四郎は額をこするようにしたが、果たして成功するであろうか?

巨人と怪人

その日からちょうど二日経った。

ここは聚楽の奥庭である。おりから深夜で月はあったが、植え込みが茂っているために、月の光が遮られている。

一宇の亭が立っていて、縁の一所が月光に濡れて、水のように蒼白く暈けていた。

そこに腰をかけている武士がある。

思案にあまったというように、胸の辺りへ腕を組んで、じっと足許を見詰めている。

木の間をとおして聚楽第の、宏壮な主殿が見えていたが、今夜も酒宴と思われて、陽気な声が聞こえてくる。間毎々々に点もされた燈が、不夜城のようにも明るく見える。

「どうしたのだろう、遅いではないか」

縁に腰をかけた大兵の武士は、誰かを待ってでもいると見えて、ふとこう口に出して呟いた。

と、その呟きに呼ばれたかのように、巨大な蘇鉄の根元を巡って、小兵の武士があらわれた。

「木村殿かな? 常陸殿かな」

「おお五右衛門か、待ちかねていたよ」

「約束の時刻よりは早いつもりだ」

云い云い静かに歩み寄って、縁へ腰をかけた常陸介と、押し並ぶように腰かけたのは、無徳道人事石川五右衛門であった。