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ちぬられたかいとう

血ぬられた懐刀

国枝 史郎

「講談倶楽部」1928(昭和3)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,586 字 · 71 页

青空文庫

公孫樹の大木の真上にあたって、五帝星座がかかっていて、玄中星が輝いていたが、一ツの簒奪星が流星となって、玄中星を横切ろうとした。

が、そこまで届かないうちに、消えてなくなってしまったからである。

「可哀そうに五右衛門は捕らえられたらしい」

一年後の花園の森

こうして一年の日が経った。

その間に起こった事件といえば、聚楽第の主人の秀次が、高野山で自害をしたことであろう。

木村常陸介をはじめとして、家臣妻妾が死んだことであろう。

石川五右衛門が四條河原で、釜茄にされたことであろう。

で、春が巡って来た。花園の森には松の花が咲き、桜の花が散り出した。そうして、麦の畑では、鶉がヒヒ啼きを立てはじめた。

そういう花園の森の中に、三人の男女が坐っていた。香具師姿の男女である。一人はその名を梶右衛門と云って、六十を過ごした老人であり、一人はその名を梶太郎と云って、その老人の子であった。二十三歳の若者である。そうしてもう一人は萩野であった。香具師姿の萩野であった。

「若い者同志は若い者同志、話をするのが面白かろう。どれどれ俺は見廻って来よう。……奴らあんまり騒ぎ過ぎるて」