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ちまんだらしちょうぶし
血曼陀羅紙帳武士
国枝 史郎
「冨士」講談社 1939(昭和14)年9月~12月中絶、「血煙天明陣」桃源社 1970(昭和45)年に付載して完結公刊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,970 字 · 176 页
(この中で寝たら、どんな気持ちするものかしら?)
この好奇心も、女心の一つであろう。
栞は、紙帳の中へはいろうとして、身をかがめ、その裾へ手をかけた。
しかし栞よ、その紙帳こそは、やはり、五味左門の紙帳なのであり、三日前の夜、風に飛ばされて、ここまで来たものであり、そうして、その中へはいったものは、男なら殺され、女なら、生命より大切の……そういう紙帳だのに、栞よ、お前は、その中へはいろうとするのか?
そんなことを知る筈のない栞は、とうとう紙帳の中へはいった。
処女の体を呑んだ紙帳は、ほんのちょっとの間、サワサワと揺れたが、すぐに何事もなかったように静まり、その上を、眼白や頬白が、枝移りしようとして翔けり、その影を、刹那刹那映した。
戸板の一団
ちょうどこの頃のことであるが、この林から一里ほど離れた地点に、だだっ広い前庭を持った一構えの農家が立ってい、家鶏の雛が十羽ばかり、親鶏の足の周囲を、欝金色の綿の珠が転がるかのように、めまぐるしく転がり廻っていた。と、筵をかけた戸板を担い、それを取り巻いた十人の男が、街道の方から走って来、庭の中へはいって来た。