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ちまんだらしちょうぶし
血曼陀羅紙帳武士
国枝 史郎
「冨士」講談社 1939(昭和14)年9月~12月中絶、「血煙天明陣」桃源社 1970(昭和45)年に付載して完結公刊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,970 字 · 176 页
それは、あの女の着ていた物が、次々に脱げて、地へ落ちたことで知れる)
しかし、その後、紙帳やお浦はどうなったことか?
それが解らないからこそ、左門は憂欝なのであった。
林を縫って流れている小川があり、水が清らかだったので、底の礫さえ透けて見えた。それを左門が跨いで越した時、水に映った自分の姿を見た。顔に精彩がなかった。
(家を喪った犬は、みすぼらしいものの代表のように云われているが、俺にとっては紙帳は家だ。それを失ったのだからなア)
顔に精彩のないのも無理がないと思った。
(どうぞして紙帳を探し出したいものだ)
彼は黙々と歩いて行った。
それにしても、何故彼は、道了塚の方へ行くのであろう? たいした理由があるのではなく、数日前ここの林へ紙帳を釣って野宿したことがあり、それが懐かしかったのと、五郎蔵の乾児二人を斬り、身をかくしたところが林で、その林が道了塚の方へつづいていたので、それで道了塚の方へ足を運ぶまでであった。
彼は、どうして五郎蔵の乾児二人が、自分の隠れている農家などへやって来たのか、解らなかった。
(やはり五郎蔵一味め、俺の行衛を探しているのだな)