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ちまんだらしちょうぶし
血曼陀羅紙帳武士
国枝 史郎
「冨士」講談社 1939(昭和14)年9月~12月中絶、「血煙天明陣」桃源社 1970(昭和45)年に付載して完結公刊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,970 字 · 176 页
は誠心を捧げてと、息絶え絶えながら、彼女は、紙帳の方へ這って行くのであった。
殺気林に充つ
お浦は、獣のように這って進んだが、渋江典膳は、よろめいたり、膝を突いたり、立ち木に縋ったりしながらも、さすがに立って、この時、道了塚の方へ歩いていた。
そう、彼は、ここまで運ばれて来て、ここが、道了塚附近の林であることを知るや、
(この負傷では、どうせ命はない。では、せめて、数々の思い出と、数々の罪悪とを残している道了塚で、息を引き取ろう。……東十郎への罪滅しにもなれば、懺悔にもなる)
とこう思って、そっちへ歩きだしたのであった。
歩くにつれて、足からも手からも血がしたたった。
しかし彼が道了塚まで辿りついたなら、南無妙法蓮華経と刻られた碑にもたれ、天国の剣を放心したように握り、眼を閉じ、首を傾げ、昔の記憶を蘇生らせようと、じっと思いに耽っている、飯塚薪左衛門の姿を、見かけなければならないだろう。
そう、薪左衛門は、そういう姿勢で、この頃、道了塚の頂きに坐っていた。
彼の顔には苦悶の表情があり、彼の体は不安に戦いていた。白髪には陽があたり、銀のように輝いていたが、その頭は、高く上がりそうもなかった。