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ちまんだらしちょうぶし
血曼陀羅紙帳武士
国枝 史郎
「冨士」講談社 1939(昭和14)年9月~12月中絶、「血煙天明陣」桃源社 1970(昭和45)年に付載して完結公刊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,970 字 · 176 页
「その時私は、勘兵衛お頭の依頼により、素早く天国の剣を持ち逃げして、林の中へ隠れましてございます」
「財宝を隠匿したが、その時突然勘兵衛めは、伊丹東十郎を穴の中へ突き落とし、『此奴さえ殺してしまえば我らの秘密を知る者はない』と申しおった」
「深い穴の底から聞こえて参りましたのが、東十郎の叫ぶ『秘密は剖かない、裏切りはしない、助けてくれーッ』という声でござりました。……林に隠れておりました私の耳へまでも、届きましてござりまする」
「おのれ不埓の勘兵衛、従来、奪った財宝を、百姓ばらに担がせて運び、隠匿した際には、秘密を他へ洩らさぬため、百姓ばらを、財宝と一緒に、穴の中へ、切り落としたことはあるが、同じ仲間を、穴へ落として生き埋めにするとは不義不仁の至り、直ちに引き上げよと拙者申したところ、突然勘兵衛め、拙者に切り付けおった」
「あなた様が刀を抜かれ、勘兵衛めと立ち合われるお姿が、林にかくれおりました私にも見えましてござります」
昔の同志、今の讐敵
「ああようやく、私の記憶は蘇生って来た。……ああ、これが、道了塚で勘兵衛と決闘した原因だったのだ。……決闘の結果は私の負けだったが」