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ちまんだらしちょうぶし

血曼陀羅紙帳武士

国枝 史郎

「冨士」講談社 1939(昭和14)年9月~12月中絶、「血煙天明陣」桃源社 1970(昭和45)年に付載して完結公刊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,970 字 · 176 页

青空文庫

そうしてこのお触れ書きは、今に活きている筈で。……ですから、勘兵衛、又兵衛が、今に生きていて、この辺にウロウロしていると知れたら、忽ち捕り手が繰り出され、捕らえられたら、首が十あったって足りゃアしねえ。……それほどの勢力のあった浪人組も、徒党も、二十年の間に、死んだり、殺されたり、ご処刑受けたりして、今に生きている者、はて、幾人ありますかねえ。……三人だけかもしれねえ。……一人は私で。一人は、ここから一里ほど離れている古屋敷に、躄者になって生きている爺さんよ。……もう一人は……」

「お侍さん」と、五郎蔵が云った。「いい度胸ですねえ」

「何んだと」

「あっしゃア、どういうものか、ご浪人が好きで、これまで随分世話を見てあげましたが、ご浪人に因縁つけられたなア今日が初めてで」

「つけるだけの因縁が……」

「いい度胸だ」

「褒められて有難え」

「百二十五両お持ちなすって。……お浦、胴巻でも貸してあげな」

「親分!」と、お浦は歯切りし、「あんな乞食浪人に……」

「いいってことよ」それからお浦の耳へ口を寄せたが、

「な! ……」

「なるほどねえ。……渋江さんとやら、それじゃアこれを……」