轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ちまんだらしちょうぶし

血曼陀羅紙帳武士

国枝 史郎

「冨士」講談社 1939(昭和14)年9月~12月中絶、「血煙天明陣」桃源社 1970(昭和45)年に付載して完結公刊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,970 字 · 176 页

青空文庫

寝静まっている旅籠からは、何んの物音も聞こえて来なかった。

立ち向かった左門と頼母

突然、隣りの部屋から、女の叫び声の聞こえて来たのは、さらにそれからしばらく経った後のことであった。(はてな?)と頼母は耳を澄ました。(変だ!)……というのは、その女の叫び声が「頼母様!」と聞こえ、「天国様を」と聞こえたからであった。しかしそれだけで、後は聞こえて来なかった。

(空耳だったかな)

そのくせ頼母は、傍らの刀を掴み、立ち上がった。襖をあけて縁側へ出た。すぐ眼にはいったのは、月光で、霜でも降ったように見える広い中庭と、中庭を距てて立っている母屋とであった。縁側を左の方へ数歩あゆめば隣り部屋の前へ行けた。そこで頼母は足音を忍ばせ、隣り部屋の前まで行き、また、耳を澄ました。たしかに人のいる気配はあったが、声は聞こえなかった。

(これからどうしたものだろう?)

不躾けに襖をあけることは出来なかった。とはいえ、女の声で、自分の名を呼び、天国様をと云ったからには、――空耳でないとして――声の主を確かめたかった。

(まさかお浦が、こんな部屋へ来ていようとは思われないが……)