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ちまんだらしちょうぶし
血曼陀羅紙帳武士
国枝 史郎
「冨士」講談社 1939(昭和14)年9月~12月中絶、「血煙天明陣」桃源社 1970(昭和45)年に付載して完結公刊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,970 字 · 176 页
「おおおお、そんな苦労まで、栞や、お前にかけたのかねえ。……野中の道了※(感嘆符疑問符、1-8-78) うむ、道了塚!」
と、薪左衛門は、グッと眼を据えた。
「するとお父様には、それを真の道了様と思われ、毎晩のように、躄り車に乗られ、塚の周囲をお廻りなさいましてございます」
「あさましいことだったのう」
「ところが、数日前の晩のことでございますが、加担人として、お泊まりくださいました、伊東頼母様と仰せられるお方が、その塚のあたりを逍遙っておられますと、お父様が、来栖勘兵衛と勘違いされ、『勘兵衛、これ、汝に逢ったら、云おう云おうと思っていたのだが、野中の道了での決闘、俺は今に怨恨に思っているぞ。……事実を誣い、俺に濡れ衣を着せたあげく、股へ一太刀! ……おのれ勘兵衛、もう一度野中の道了で決闘し、雌雄を決しようと、長い長い間、機会の来るのを待っていたのだ』とおっしゃったそうでございます」
「野中の道了での決闘? フーム……」
と、薪左衛門は考え込んだ。
(野中の道了で、来栖勘兵衛と、俺は、決闘した覚えはある。……だが何んの理由で、決闘したのだろう?)
彼には、肝心のことが解らなかった。