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まちのたんてい

街の探偵

海野 十三

「シュピオ」1938(昭和13)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,275 字 · 9 页

青空文庫

『一体どうしてホスゲン瓦斯などにやられたんだね』

『それが分らん。なにしろ七名とも、皆死んでいるのだから』

そういっているところへ、部屋の中が俄かに騒がしくなって、入口が大きく開かれた。中からは、数名の刑事や警官が、一つの屍体を担ぎだした。

僕はそれを見ると、横にとびのいた。

担がれている屍体が、ぎゅーっと顔をしかめた。

『あれえ、生きているじゃないか』

と、僕は思わず叫んだ。

『しっ、静かに。一人、息をふきかえしたのだ』

と警官が叱った。でもその顔は喜びに輝いていた。

『――この男が口をきくようになれば、事件がどうして起ったんだか、分るぞ』

と、最後に部屋から出てきた警部が、部下にそっと囁いた。

帆村と僕とは、その生きかえった男の後について、急造の病室について入った。そこには瓦斯中毒の研究で有名な軍医のN大尉が、白い診察服の腕をまくって病人を迎えた。

軍医はすぐさま、寝台の上に寝かした病人の診察にとりかかった。

『研究員、松下清太郎。三十一歳――か』と軍医はひとりで肯いていたが『よし、酸素吸入を行う。それからカンフルの用意だ』

酸素吸入が始まると、蒼白だった病人の顔に、俄かに赤味がさしてきた。