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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

八

ストリップの女は踊りながら、燭台を一つ一つ手にとって、吹き消しはじめた。壁面のローソクを消し終ると、テーブルの左右の燭台を吹き消すために長平の後をすりぬけた。片足がゆるやかに長平の頭上をまたいだのである。まごう方もない全裸であった。そして、次の灯も消え、長平の視界からは、すべてが一瞬にはなれてしまった。広間は真の暗闇。一語を発する者もいない。

正面下座からパッと光った。又、ひとつ。誰かが、懐中電燈をつけたのである。誰だか分らない。懐中電燈は客席の天井をてらしている。二本の光がいりみだれて天井をさわいでいるが、下の方へは降りてこない。照らす人も見えないが、客席の様子も知ることができない。

二本の光は天井を交錯しながら、ジリジリと客席の方にすすんでくる。誰かが両手に懐中電燈を握りしめて、こっちへ歩いてくるらしい。

長平の左腕に誰かの手がふれた。軽くさするように這い降りる。そして、長平の手がやわらかい女手に握られた。せつ子の手だ。

長平はされるままになっていた。光の主は客席の前にせまっている。二本の光芒は客席の真上をクルクル狂いみだれている。