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まちはふるさと
街はふるさと
「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页
二人は小さなバアの前を通りかかった。記代子は青木を取りおさえでもするように、腕に力をこめて、押した。
「ここで、休むのよ」
「え?」
そこは礼子の働いているバアだ。記代子に教えたはずはなかったが、知っている様子である。
「こゝに、ぼくの昔の奥さん、働いてるの、知ってるんだね」
記代子は睨んで、答えない。
「誰が教えたの?」
「休みましょうッたら」
記代子は身体ごと押した。
「ま、待ってくれ。ぼくの立場を考えてくれよ。修学旅行の女学生が色町をひやかすような気分で、ぼくをオモチャにしてくれるなよ」
「女学生じゃなくッてよ」
「すまん。しかし、な。別れた奥さんがお客さんにサービスするのを見るだけだって悲しいんだ。あれがふられた亭主だなんて、そんな哀れな顔を見たがっちゃ、いけないよ。それに、今日は、持合せがないのさ。別れた奥さんにたかって飲むほど、みじめな思いをしたくないんだ。それぐらいなら、泥棒がマシさ。なア、記代子さん。あんた、ぼくが泥棒なみに生きてきたこと、見て、知ってるじゃないか。しかし、別れた奥さんに、たかりたかアないんだよ」
記代子の目にあらわれたのは、軽蔑の色だけだった。