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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

子供の案内で、近所のお寺へ行ってみると、木立の中で、せつ子は子供たちと蝉をとっていた。

「お早う。まだ、十時半よ」

「ぼくは早起きだよ。荷物は?」

「ちょッと散歩にぬけだしてきたのよ。大阪から」

「じゃア、殿様のお供だね」

せつ子は軽くうなずいてみせた。

「京都の子供ッて、東京の言葉がわからないのかしら?」

「どうして?」

「お手紙とどけてちょうだいッて頼んだんです。なかなか分ってくれないのよ」

「それは君の頼みが奇怪だから、理解できないのさ」

「いいえ。理解しようとするマジメな気持が顔にアリアリ現れているのよ。言葉が通じないらしいわ。京都にも気の短い子がいるのよ。言葉が通じなくッて、モシャクシャしたらしいのね。インデコ、だって。わかる?」

「インデコ?」

「もう、帰ろう、ッてことなの。さッさと逃げて行っちゃったわ」

せつ子は板チョコを折って長平にくれた。子供たちがチョコレートをかじっているところをみると彼女が配給したのに相違ない。せつ子が手をふってサヨナラと叫ぶと、古都の子供たちは、サヨナラ、バイバイと言った。

「浩然の気を養うという大人の風格があるよ」

と、感心したのか、ひやかしたのか、わけのわからないことを長平が言うと、せつ子はなさけなそうに苦笑して、