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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

せつ子は、又、うなずいた。

考えてみたって、仕様がない。長平は観念した。人間はみんなそれぞれ一人前に動きだすのが当然なのだから。どこといって、ぬきんでたところもなく、一風変ったところも見えない記代子なのだが、お半だのお七だのと思いきったことをやらかす女は、平凡で取柄のない小娘にかぎるのかも知れない。

それまでは予想もしないことであったが、恋をしたあとの記代子のふてぶてしさが、にわかに思い当るような気にもなった。

「なぜダタイしないのだろうね」

「なぜでしょう」

「よほど、頭がわるいんだろうな」

「平凡な子ほど気違いじみたことをしでかすわ。女の本能が気違いじみているのね」

「静かにさとしたらどうだろう。気が立っているだけじゃないかな」

「そうでもない。私の能力でできるだけの手をつくしてみた。青木さんの子供なんか、生ませたくなかったから」

手を変え、品を変え、さとしたり、すかしたりした時のことを思いだすと、腹のたつことばかりであった。

青木の口からダタイをすすめさせもしたし、青木もそれに不賛成ではなかったが、記代子はきかなかった。青木もあきらめて、

「結局ダタイをすすめることが、何よりダタイしないという決意をかたくさせるようなものさ。