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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

欠勤届を持たせてよこしてね。皮肉な先生さ。タキシードにシルクハットの晴れの日にあいにく美貌に傷をつけまして相すみません。アハハ。あの人は、めぐりあわせまで皮肉に回転するらしいや。しかし、ひどいぜ。鬼瓦みたいな顔さ。喋るのも不自由なのさ。見舞いに行って、気の毒したよ」

「どんなことでインネンつけられたのですか」

「わけがわからんそうだがね。とにかく一撃のもとにノビたんで、かえって良かったんだそうだ。悪酒の酔いは、ノビたぐらいじゃ醒めないそうだぜ」

放二の頭には、キッピイの謎の言葉がからみついていた。青木のなぐられたのはキッピイの店らしいが、彼女はそれを言わなかった。言う必要がないことも確かであるが。

しかし、キッピイに会う前に、そのことを知っていたら、と、放二は残念がった。五人目の人物の多少の手掛りにはなったであろう。放二は、ダンスホールでキッピイの居場所をきいたとき、切符売りの女が彼に云った忠告も忘れていなかった。キッピイには悪いヒモがついているらしい。ヒモと五人目の人物は、たぶんツナガリがあるようである。

放二はせつ子に報告した。

「とにかく、生きておられることだけは確実のようです」