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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

しかし、長平は、自分の受け取り方がヒネクレているせいかも知れないと自戒した。

第一、青木の言葉をどう受けとっていいのか、どんな返答をしていいのか、と迷っているのだ。礼子は京都の長平を三度訪ねてきたが、いつも居留守を使って会わなかった。そんなことも、どこまで答えていいか分らない。自分に後暗いところがあるからではなく、青木の心中がはかりかねたからである。

礼子は青木の細君だった。今は鎌倉の実家に別居しているが、別居だか、離婚だか、そのへんのところも分らない。

終戦後二年ほどして、長平は礼子から美文の甘ったるい手紙をもらった。三度四度と重なったが、もともと小説家志望だった礼子が、終戦後の全国的に発情期的な雰囲気に、年にもめげず宿念の志望を煽られての筆のすさびだろうと、軽く考えて返事もせず打ちすてていた。

同じころ、良人の青木は書斎をでて事業にのりだし、鉱山開発だの、当時流行の出版だのと手広くやりだし、出版のことでは時々長平を京都まで訪ねていた。

青木は長平と会うたび、礼子から呉々もよろしくとのことだったよ、とか、上京の節はぜひ泊りにきてくれと頼まれたよ、などと付け加えるのが例であったが、あるとき、