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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

そうときまった人間だけが、ヨタモノ稼業がつとまるのである。

彼女は記代子をとりもどすことにきめていたが、円満に返してもらうことも、金を払ってとりもどすことも考えなかった。金というものは、ヨタモノや乞食やパンパンなどに呉れてやる性質のものではない。どんなバカげた浪費をしてもかまわないが、それは仕事に関聯しての話である。

エンゼルから記代子を奪い返すだけのことだ。そういう権利があるからである。理窟はどうでもかまわないのだ。ヨタモノを相手に論争するバカはないのだ。記代子がエンゼルにほれていようが、よしんば、正式に結婚の手続をしていようが、そんなことも問題ではない。

理論的にはエンゼルに勝身があっても、ヨタモノには、良家の娘を女房にする権利などはないのである。それがせつ子の考えであった。社会秩序に反し、不正を稼業としている人間が、たまたま一事に関して正当な理論をふりまわし、権利を要求しようたって、そんな虫のいいことがとおるものではない。

しかし、警察の力をかりず、法律の名をかりず、極秘裡に記代子をとりもどすには、どういう手段があるだろうか、と、せつ子もこれには考えこんだ。