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まちはふるさと
街はふるさと
「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页
誠意や赤心というアイマイなものは、売買の規準にはならないものだ。一歩まちがえば、神がかり的な軍人たちや、教祖と信徒のようなものになってしまうし、まちがわなくとも、それがギリギリの正体なのかも知れないのである。
むしろ、精神的なものも、金で買うという方法が、マギレがなくて、元々チグハグな人生では、ともかく最も正常な方法なのかも知れない。人の心というものがトコトンまで買いきれないのは分りきったことであるが、一応物質に換算して、ある限界までは金銭で売買するのが、むしろ健全だ。それ以外により明確な手がないからだ。
しかし、放二は、十万円でエンゼル夫妻の信頼を買うつもりではなかった。彼はその考え方を捨てたのである。何も買ってはいけない。彼はただ二人のために誠意をつくそう、と自分に言いきかせていたのであった。
そのつもりで、彼らに渡す十万円をフトコロにでかけてきたが、フトコロに金があるうちは、まだ、いろいろなことを考える。その金で転地をすすめてくれたせつ子の気持も気にかかるし、せつ子の厚意が十万円にこもっていると思えば、みすみす詐取とわかっているエンゼルの軽薄な気持を比較して、もどかしさを感ぜずにもいられなかった。