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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

なぜなら、礼子は長平を訪ねたが会えなくて残念がっていた、と青木が云っているのだから。

「そう。そんなことがあったね。せっかく京都まで訪ねて来られたそうだが、あいにく上京中で会えなかったよ」

長平は、こう答えるまでに甚しく迷ったのである。礼子が三度訪れたこと、居留守をつかって会わなかったこと、それをハッキリ云うべきではないかと迷った。自分の態度をハッキリ示すことは、相手のハッキリした態度を要求することでもあるからだ。

しかし、青木夫妻の別居が決定的なものだとすると、いかにも礼子が哀れであるし、二人を突き放している自分が、思いあがったようで、イヤでもあった。

「一度、礼子に会ってやってくれないか」

青木の言葉は静かであった。それを受けとる長平の気持は複雑だ。

「君からそんなことを頼まれると、ぼくは、迷いもするし、ヒガミもする。また、疑いもするし、怒りたくもなるよ。そう思わないかい? 君は?」

長平は返答を待ったが、答えがなかった。そこで、言葉をつづけて、

「ぼくは礼子さんに一度だけ返事を書いたことがあったよ。別居したという手紙をもらった時だね。こんな返事だ。