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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

イヤ。こんなことを云ったって、君にへつらってるワケじゃアないのさ。オレはね、自分の迷いが自分だけじゃア防ぎとめられないことが分ってきたらしいのさ。だんだん、いろんなことに、あきらめるようになったのさ」

青木は一ぱいごとにたのしんで何バイも酒をかさねた。

「君はいつも、仏像みたいに、だまっているなア。なんにも返事をしてくれねえや。しかし、君の人相は、いい人相だ。オレは安心して、なんでも喋っていられるよ。昔から、君は、そうだったよ。だが、あのときに限って、どうして、そうじゃなかったのだろう? え? ねえ、長平さん。オレにだって分ってるよ。決して人に愛されるようなオレの姿ではなかったことがね。しかし、オレは、真剣で、必死だったんだ。そんなことは、手前勝手なことには相違ないが、君だけは、そこを見てくれると思ったんだがなア。教えてくれよ。なぜ、怒ったのさ」

「知らないね。オレはお天気まかせだよ。しかし、真剣、必死というものは、自分ひとりでやるものだよ。だが、そんな話はよそうじゃないか」

「そうか」

青木は、また、杯をかさねた。

「たしかに、いいことだ。こうして昔の友だちと静かに酒をのむことは、ね。