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まちはふるさと
街はふるさと
「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页
かかる命令が可能であると信じる人は、すでに人間の仲間ではありません。失礼ながら、記代子さん、あなたは逆境の人ですよ。ぼくが下僕の役を奉仕するのも、その逆境に対するきわまりない共感ですよ。逆境の人は、まさに人間中の人間でなければなりませんね」
逆境のネロ皇帝なんて、道化芝居にもありませんや、と云うところをグッとおさえた。
六
青木は持ちまえのカンの良さで、いろいろのことを察しとった。
礼子に会いたいという記代子の希望は、それか彼女の本当の希望ではないのである。彼女の希望はいろいろあるが、いずれも不可能にちかいことばかりで、実際に望むものには手をだすことができないのである。
礼子に会いたいというのは窮余の策で、たまたま青木がいるために思いついた程度の、彼女自身きわめて気乗りのしない希望であるに相違ない。彼女が益々不キゲンなのは、そのためであろう。
記代子のような暗い過去をもった人間が、そして、暗い過去を生かす才能に欠けている人間が、今後の身の振り方をいかに定めるべきであるか、ハタの目からも途方にくれる問題である。
まず青木の頭にひらめくのは自分自身のことであるが、記代子はすでに物の見方がよほど変化している。