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まちはふるさと
街はふるさと
「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页
旅行の支度をしてくるから、三十分だけ待ってて下さい」
記代子を承諾させて、青木は大急ぎで宿へ戻った。
七
青木が宿の前までくると、せつ子の自家用車がとまっている。シマッタと思ったが、もうこうなったら、逃げ隠れはしない方がよかろうと覚悟をきめた。
玄関をはいると、せつ子が宿の人たちから色々何かきいているところであったが、青木を認めてサッと面色を改めて詰問にかかろうとするのを、そのヒマを与えず、
「ヤ。わかっています。まさしく記代子さんは、昨夜ぼくを訪ねてきました。そして、たしかに、ぼくが保護いたしております。全部お話いたしますから、ぼくの部屋へきていただきましょう。実に、三人目。いやはや、目も当てられねえや。三方損の三人目。ね。あなたは分って下さらないかも知れないねえ」
穂積もせつ子と一しょであった。せつ子は青木の部屋を見まわして、記代子の残した動物臭をかぎわけているらしい様子である。いかにも重大決意を蔵するかのような静寂な態度に、青木はウンザリして、
「ねえ、社長さん。嵐の前の静けさですか。しかしですよ。もしもあなたが、今度のことで、ぼくに向って何かの遺恨があるとしたら、そして大いにぼくを面責なさろうというお考えなら、天下の、イヤ、東京の、ハッハ、だんだん小さくなりやがら。