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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

しかし、こんな気魄というものは、いわば非常時的なもので、平時の心がこれをマトモに相手にすると、無用な傷もつくらねばならない。一方的な気魄よりは、空論の方が、まだマシだ。長平は空々しく、

「御自分で、おきめなさい」

いと簡単に突ッぱねる。

そんな言葉は相手にしません、と礼子の全身の気魄も語っている。

一段と、たたみこんで、

「私が無用な存在だとおッしゃって下されば、私は死にます」

視線は益々放れない。

しかし、長平も、たじろがなかった。

「会話というものは、急所にピンとふれていなくては、こまるものです。ぼくたちの場合、急所がどこにあるか、先ずそれを考えようではありませんか。急所はずれのキワドイ文句を述べ合ったんじゃ、カケアイ漫才じゃありませんか」

まさしく茶番にほかならない。かほどの茶番を自覚しない礼子のリリしさ、高慢さが、長平をいらだたせた。

「あなたとぼくのオツキアイの上で、ぼくの一存で、あなたの生死が左右できるようなイワレがあったでしょうか。かりにも一人の生死にかかわることであれば、ぼくも責任をもちたいとは思いますが、イワレなく責任をもつわけにはいきません。