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まちはふるさと
街はふるさと
「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页
「もうお話することもないようですが」
礼子はクスリと笑って、
「ムリですわ。そんな。男と女の話ですもの、差向いて、きいて下さらなくちゃ」
全身に媚がこもった。
長平の方が思わず目をそらして、
「じゃア、青木君と三人で」
「ええ、青木となら、かまいません」
「じゃア、ぼくたちの話が終るころ、七時ごろにでも、いらして下さい」
礼子は去った。
去る前にもらした礼子の媚が、長平の頭のシンにからみついて放れない。毒にあてられたようだ。長平の血に浮気の虫が多すぎるせいだが、浮気の血が騒ぎたっても陽気になれない時もある。長平の心はふさぎ、にがりきるばかりであった。
「君、ぼくに代って青木夫妻に会ってくれ」
と、彼は放二にたのんだ。
「ぼくの気持は、きいての通り、あれで全部だよ。君の一存で、自由に捌いてきてくれたまえ」
「お気持だけはお伝えしてきます。ですが、一存で捌きはつけかねますが」
「今夜一夜の間に合せの捌きだよ。あとは、どうなろうと、かまやしないさ。こんなバカバカしい話はもうタクサン」
長平はふと梶せつ子に思いつき、放二をやるのは、いけないかな、と考えたが、放二の澄んだ落付きを思うと、自分以上の老成した大人が感じられ、すべての不安は無用に見えた。