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まちはふるさと
街はふるさと
「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页
記代子も戦災で父母を失っていた。それ以後は叔父の長平がひきとって、親代りに育てたのである。
記代子を勤めにだしたとき、放二と愛し合うようになっても悪くはない、むしろ期待するような気持があった。それぐらい放二の人柄を愛していた。
しかし記代子の観察も、女らしくて面白い。放二は人の着古したものを貰いうけて身につけていたが、それを整然と着こなして、人に不快を与えない。天性の礼節が一挙一動に行きとどいているせいでもある。けれどもシサイに見ると、いかがわしいところがあった。
今もって、すりへってイビツな軍靴をはいている。何十ぺんツギをあてたか分らぬような、雑巾のような靴下をはいている。
はじめて見た人は、当節の貴公子はタケノコだから、と、かえって痛々しく思うかも知れないが、毎日見なれている者には気にかかることであった。
放二の慎み深い気質では、自分の破れ靴下が気にかかるのは当然で、訪問先で坐り様がいかにも窮屈そうなのは、靴下を隠すようにしているせいだ。
放二の給料は年齢のわりに多かったし、長平から貰う手当もあるので、靴や靴下が買えないほど窮迫するイワレがなかった。