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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

「じゃア、飲み屋で、酔っ払って、泣いてたのね。あんたぐらいの年配の人、酔っ払うと、ムヤミに大きなことを言ってバカ笑いするもんね。あんたみたいに、メソメソするのは例外よ」

「葬式の跫音なんだな」

ルミ子はタバコを一本ぬいて火をつけた。

「なんだい。煙を吹いてるんじゃないか。すうもんだぜ、タバコは」

「すうのはキライ。むせるから。ぼんやり考えごとをするとき、タバコふかすのよ」

「一本おくれ」

「あんた、立派なミナリしてるけど、お金ないのね。さっきの二千円も、あんたのお金じゃないでしょう」

「御説の通りさ。礼装乞食というんだな。電車賃まで北川君にオンブしているのさ」

「酔ッ払い!」

ルミ子は小さく吐きすてるように叫んだが、顔にはなんの表情もなく、悠々とタバコをふかしていたが、

「梶せつ子って、兄さんの世界中でたッた一人の女なのよ。十年昔から、思いつめて成人したのよ。凄腕の大姐御らしいけどね。兄さんには、小鳩か天使のようにしか見えないらしいわね」

しばらく無心に煙の行方を見つめてから、

「毛皮やウールの最高級の流行服を身につけてね。首輪、耳輪、腕輪もつけてるのよ。四、五十万のものを身につけてるらしいわね。