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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

「大庭長平全集にはった以上は、おりませんからね」

と、せつ子はニッコリして、

「私、出版社長の肩書で、あなた方の次には大庭先生を御招待したいと思うのよ。その機会をつくってちょうだいね。功を急いでるわけではないのです。私は何年間でもおりないから。ただ記念日の第二日目の宴会までにね」

せつ子の慈母の眼差しに変化はなかったが、二人に拒絶を許さなかった。

「ねえ。大庭先生の滞在日程をのばしても、私の宴会に出席して下さるようにお願いして下さいね」

二人は、あかるく、うなずいた。

第二の宴

一

翌朝、放二と記代子は新宿駅で待ち合せて、社へでる前に、長平の宿を訪ねた。せつ子の依頼を果すためであった。

「梶女史、数千万円を握るに至ったかね」

長平は自分でも意外なほどの好奇心を起した。

昨夜、長平のもとへ、呉竹しのぶと穂積らが遊びにきたのである。彼らは東海道の汽事の中から、ひきつゞいて酔っ払っていた。そして、車中で見かけた宇賀神とせつ子の話をきかせた。

それをきいた時には、なんだ、そんな女なのか、と、長平は梶せつ子を軽く見くびっただけであった。まだしも、宇賀神という人物の方に興をかられたほどである。